佐賀県柔道協会会長 中島祥雄
今年日本柔道は、リオオリンピックにおいて金メダル3個を含むメダル獲得数 が12個と素晴らしい成績をおさめ、柔道日本の名を高めてくれた。特に男子にあっては、全員メダル獲得という快挙であった。
佐賀県にあっては、全国小学生学年別柔道大会で秀島道場の岡島君が準優勝、全国中学校総合体育大会、60キロ以下で有田中学校の近藤君、55キロ以下で昭栄中学校の田中君が優勝という快挙を成し遂げた。また、インドで開催されたアジアカデ選手権大会の55キロ以下で佐賀商業高校の豊島君が優勝するなど本県の若い力の活躍が目だった年でもあり、加えて、岩手国体で成年男子が5位入賞を果たしてくれたことは、7年後の佐賀国体に向けて希望を抱かせる成果ではなかったかと思っている。
しかし、本県柔道の本国体出場の実態を見てみると、少年柔道や女子柔道にあっては、ここ何年も九州ブロック予選に敗れ本国体に出場していない。佐賀国体に向けての今後の目標は、成年男子、少年男子、女子の本国体常時出場を目指して努力しなければならない。
次に柔道の底辺拡大についてであるが、本県は柔道の登録者数が今年1,494名で前年より24名減と僅かではあるが減少している。しかし、毎年減少の一途を辿っており、なかなか減少傾向に歯止めがかからない状況にある。少子化等の影響もあるが、スポーツの多様化もある。こういう現状の中で、柔道の良さをいかにアピールしていき、魅力あるものとしていくかが重要である。柔道人口の裾野を広げていくことが、佐賀県柔道の発展強化にもつながっていくものであり、各指導者にあっては、次の点に留意して本県柔道の発展強化に努めていただきたい。
1 重大事故の防止
今年全国で死亡事故を含む重大事故は既に5件の発生をみており、痛恨の極みである。柔道に伴う重大事故は絶対あってはならない。指導者にとって最も気をつけなければならない重要なことである。万が一重大事故が発生すれば柔道の振興に大きな妨げになることは間違いない。重大事故を防止する為には、柔道の習い始めに柔道の基本である受け身をしっかり教えなければならない。皆さんが柔道を習い始めた頃を思い出して欲しい。何ヶ月も受け身の稽古をしたはずである。そして、どのように転ぼうが受け身で自分の身を守ることが出来たはずである。今、事故が一番多いのは、後方受け身での後頭部の打撲である。最近の子供は腹筋を含めた体幹が弱い。受け身の練習と並行して、腹筋、背筋、ブリッジ等のトレーニングを行い、体幹の強化を図ることも大切である。また、投げ技へ対応した受け身の稽古も片膝をついての受け身など段階を追って、習熟度を見ながら進めなければならない。
では、もし目の前で大外刈りを受けた子供が後頭部を打撲して一時起き上がれなかった場合や乱取り稽古中に後頭部を打撲した場合、指導者としては慌てることなく、その場の状況をしっかり見極め、救急車を要請するなど必ず医者の診断を仰ぐ必要がある。万全の注意を持って臨んで欲しい。
2 個々の特性に対応した熱意ある指導
柔道の発展にとって一番重要なことは指導者の熱意である。指導を受ける子供達は性格、体力等千差万別で一人一人違う。その特性を見極め、各人に対応した的確な指導を行うことは極めて重要であり、子供達の柔道を伸ばすことにつながる。
その為には、指導能力の向上を図る必要があり、その重要性に鑑み、各種指導者講習会の場を活用するなどの自己研鑽に努めていただきたい。
3 柔道人口の発掘〜声かけなどによる創意工夫した勧誘活動
地域における柔道人口をいかに増やしていくか、少子化等の中でサッカーや野球など他の競技と競合し、非常に難しい問題である。子供達を強くして、保護者を強い味方にすることも有効と思うが、現代になって失われつつある長幼の序や礼儀、他者への思いやりというものを柔道を通じて指導することが大切である。柔道は、日々の稽古によって強靭な肉体と何ものにも負けない強い精神力を養ってくれる素晴らしい武道である。嘉納治五郎先生が柔道創設した時の理念である「精力善用自他共栄」の精神をしっかりと教えることが、保護者や社会から共感を得ることになると思う。現在行なっている「柔道マインド」を徹底させることも方法である。派手ではないがこのような地道な活動を続けていけば、必ず花は咲くと確信している。
その他各論的に大事と思うのは、地域の中で時間を持て余している子供や運動神経に優れ、将来強くなりそうな子供達に積極的に声をかけ、勧誘活動を行うのもひとつの手段ではないだろうか。指導者の皆さんの創意工夫した取り組みを期待している。
4 その他
今年9月14日に開催された全柔連理事会で決定されたことを何点かお知らせしたい。
(一) 少年少女柔道普及振興基金(通称;白石基金)の運用について
今年4月に熊本県藤園中学・九州学院高校の元柔道部監督であった白石先生の死去によりご遺族から少年少女柔道の普及振興に役立てて欲しいと全柔連に一千万円の寄付があり、有効活用する為、全柔連があと一千万円を追加して今後10年間を目処に毎年少年少女の柔道普及振興に関し顕著な成果を上げた団体を20団体選考し、各団体に表彰と奨励金十万円を贈ることになった。
(二) 大会等における「入れ墨」をした選手(高校生以下)の取扱いについて
平成30年4月以降全柔連が主催又は後援する未成年者の大会において「入れ墨」をした選手は出場できないこととする。それまでの間は、当該選手の出場をできるだけ自粛することとし、やむを得ず出場する場合は、Tシャツ、包帯、テーピング等で隠すなどの措置を取って出場を認める。
(三) 柔道競技に関わる活動に関する見舞金支給規程について
指導者・競技者(全柔連に会員登録している者)が学校、道場およびこれらに類する施設で練習中、日射、熱射、急激かつ偶然な外来の事故により傷害を被り180日以内に死亡した場合、予期されなかった病死によって24時間以内に突然死した場合、身体に傷害を被り180日以内に後遺障害が生じた場合に、二百万円の見舞金が支給される。
資格として会員登録が前提であるが、全柔連会員登録システムで会員登録が確認できれば問題ないが、それ以外は登録申請が確認できる者も認められる。その他全柔連に所属しているチームに対しチームの加入意思が確認できる資料(入部届けや加入申込書等書面にて確認できるもの)が必要となる。